さあ, 今回はビッグネーム「太宰治」について考察していきたいと思います。

「太宰治」と言えば, 最近 (2019) でも俳優の小栗旬さん主演で映画も公開されたばかりなので, 知っている方も多いと思いますが, 「人間失格」ですよね。

現代でも映画化されるほど, 絶大な人気のある人を考察していくのですが,

彼は本当に不幸な人生を送ってきたのです。

それは現代, 「境界性人格障害」だったのではと言わています。

太宰治が「境界性人格障害」であった根拠とその心理について考察したい。

 

「人間失格」を読んだ方の中には, 心にグッとくるものがあったのではないでしょうか。

それがなぜなのかヒントになれば幸いです。

 

太宰治という人物―境界性人格障害―

・はじめに

さっそく太宰治について考察していきたいところなのですが,

詳しく知らない!

という人のためにざっくりと太宰治と言う人物について, 簡単にご紹介したいと思います。

もう知っている!

という方は, 下の心理的考察から読んでみてください

太宰治については「人間失格」を用いてご紹介したい。

 

・「人間失格」とは

「人間失格」は太宰治の代表作と言ってもいいでしょう。

現代でも大変人気があり続けています。

「人間失格」は, 太宰治の自伝的小説です。

つまり, 太宰治の人生がそこに書かれているのです。

「人間失格」では, 「大葉葉蔵」という主人公が出てきます。

この葉蔵は太宰の他の作品にも出てくるのですが, 太宰は自分を客観的に見るというやり方で自分を葉蔵として書いています。

そのため, 「人間失格」でも葉蔵が主人公として書かれます。

 

次に, 自伝的小説についてですが,

一般的には, 自伝的小説は事実だけが書いているものとは限りません

ストーリーの多少の変更や脚色があっても構わないんです。

しかし, この「人間失格」は, 親族や友人が言ったこと, 主治医のカルテなどからほとんど事実であろうと言われています。

「人間失格」から考察しても差し支えなかろうと考えた次第であります。

 

・内容要約

※心理的考察を行う上で必要だと思われる箇所のみ抜粋する。

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 また, 動画で知りたいという方は, 「Youtube大学中田敦彦 人間失格編」をご覧下さい。

 

まず, ある写真があるという記述から入ります。

その写真には, 真っ暗な部屋でポツンと座っている白髪の男性が写っていました。

その男は若くして白髪を生やし, 周りからはもう中年のように見られていたのです。

という客観的な文章で始まります。

この男のことが気になる。

というところで, 内容に入っていきます。

葉蔵の幼少期から描いています。

 

恥の多い生涯を送ってきました。

という言葉から入ってまいります。

葉蔵は, 政治家の家に生まれました。お父さんが権力者だったのです。

どれくらい権力者だったかというと, 彼の兄弟は, 学校でどんな成績をとったとしても, 「優」がつけられていたのです。

葉造は, たくさんの兄弟の末っ子に生まれました。

家はとても裕福で, 家にはたくさんの使用人がいたのです。

家には兄弟と使用人, たくさんの人がいたことがうかがえます。

使用人は家事をしたり, 子どもたちの世話をしたりしていたのです。

葉蔵は, 実母にはほとんど育てられず, 叔母や使用人などに育てられていたのです。

「人間失格」では, ほとんど実母の話が出てきません

興味深いところです。

 

父は, とても厳しい人だったそうです。

父に逆らうことができず, 怯えて生活をしていました

そんな葉蔵は, 食事のときが一番苦しかったと述べています。

関係あるのかは定かではありませんが, 葉蔵は,

「空腹という感覚がわからない」

言っています。

腹が減ることがないとは, 一体どういう意味があるのでしょうか。

さて, 父に怯えていた葉蔵は, 東京に行く父にお土産を頼むシーンで, 父の顔色をうかがって行動していたことが分かります。

 

父が選挙演説があるときには, 使用人たちに連れられ, 演説を見に行きます。

その帰り, 使用人たちは葉蔵が聞いているにも関わらず, 父の悪口を言っていたのです。

普段は, 父に良い顔を見せているのに, 裏では父を悪く言っていた。

葉蔵はこのことがとても嫌だったそうです。

 

そして, 文章の中に唐突に出てくる悲惨な文章が書かれています。

私は下男や女中たち (使用人) に, 悪いことを教えられたり犯されたりもしていたのです。

ここで, 性的虐待があったことを告白します。

性的虐待とその影響については, 詳しく述べませんが, その後の人格に大きく影響する可能性がある要因です。

 

その後, 小学校時代を経て, 大学時代に進んでいきます。

(興味深いシーンがあるところなのですが, 今回は省略)

 

葉蔵は東京の大学へと進学します。

しかし, 葉蔵は大学の雰囲気に馴染まなかったのか, つまらないと感じたのか, 葉蔵はさぼっては画塾へ通います。

画塾とは絵の塾のことですね。

そこで, 陽気で金と女が好きな「堀木」という男性と知り合います。

「堀木」と遊ぶ中で, 葉蔵は様々な女性と出会います

とっかえひっかえの不埒な関係を続けていくようになります。

(個人的には, 遊んでいたというより, 関係を維持するのが怖くなったのだろうと思っています。)

 

そしてある日, 葉蔵は女性と海に飛び込み心中しようとします

しかし, 彼だけは死ぬことができませんでした

彼はその後, アルコール中毒, 薬物依存になり精神病に入院をします。

鉄格子の病室で半ば隔離された葉蔵は呟きます。

「人間失格だ。」

 

やがて, 葉蔵は1人の女性と結婚します。

葉蔵が2階にいるとき, 彼の家を訪問してきた男性に妻が犯されてしまいます

そのことにかなりショックを受けた葉蔵はとうとう愛人の女性と川に飛び込み, 死んでしまいます

 

死んだ後, 葉蔵を知る人物が, 葉蔵のことについて聞かれるシーンがあります。

そして女性は言います。

「あの人のお父様が悪いのですよ。」

「神様のように良い子でしたから。」

 

・作家としての太宰治

「人間失格」では描かれてなかった作家としての太宰治について簡単に紹介した後, 心理的考察に入りたい。

彼は一時期「画家になる」と言ったものの, 作家として評価されるようになりました。

彼は芥川賞を受賞したいと強く思うようになりました。

その頃の彼の生活は, 薬物依存やアルコール依存の治療薬でお金はなく, 怠惰な生活を送らざるを得なかったと言われています。

当時の芥川賞の選考委員であった川端康成に, 太宰は手紙を出しています。

賞をくれないのなら死ぬ

というの内容でした。

彼は懇願の手紙を出すのですが,

本来, 芥川賞は作品の評価だけでなく, 作家自身もその評価対象とされるところがありますから, 借金を抱えている太宰治は, 候補に挙がるも受賞とまでは生涯いきませんでした

そのことに怒った太宰はさらに川端康成に手紙を出します。

「刺し殺してやる」

この手紙は強烈なものだったのですが, 手紙の最後には次のように言っています。

「私を認めてください。私にどうか愛をください。」

というような文章で手紙を終えています。

これは, 彼の人格を表していると思われるところなので, 後述したい。

 

以上が太宰治の人生です。

以下に考察に入りたいと思いますが, まずはキーワードの境界性人格障害をご紹介してから入ります。

―太宰治の心理的考察

・境界性人格障害

考察に入る前に, 境界性人格障害 について紹介したい。

境界性人格障害 (Borderline personality disorder) 以下:BPD」は20世紀初頭から問題視され始めました。

通常の心理療法では, 治療困難な患者が多くみられるようになってきました。

BPDについて精神医学診断マニュアルDSM-5」から引用したい。

 

i. 見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力

ii. 不安定な対人関係

iii. 同一性の混乱

iv. 自殺行為, 自傷行為ではない衝動性

v. 自殺の行動, またはそぶり

vi. 感情不安定性

vii. 慢性的空虚感

viii. 怒り

ix. 一過性の妄想様観念または解離症状

 

簡単に紹介しましたが, 一般にBPDは対人関係において「理想化」と「こきおろし」が見られます。

つまり, 人に激しく依存するのですが, 一方ではこの人は私を捨てようとしているのではないかと不安になり, 依存対象に怒りを向けるといった対人関係を経験します。

さらには, 性的衝動が強く, 自殺未遂を多く繰り返します。

有病率は2019年現代で1~3%くらいで女性に多いと言われています。

 

・太宰治のBPD的特徴

太宰治は, 上記の要約にありますように, 幼少期より母親との適切な関係が築けませんでした

実母ではなく「母親代理者」に養育されていたため, 太宰治は本当の母親から愛情を拒否されたという体験をしました。

その見捨てられたという体験を体験する一方で, 見捨てた母親への怒りが生じます。

そして, 幼い太宰治は怒りや憎悪, 復讐心を抱くようになっていきます。

後の, 数々の自殺未遂や薬物依存, 心中事件などの自己破壊的行為は, 彼の母親への復讐心だったのではないかという見方もできます。

また, 芥川賞を求める太宰が, 川端に手紙を送った際に,

「くれなかったら死ぬ」

というのは, DSM-5にもある「自殺行動, またはそぶり」に当たります。

これは現代のBPDの特徴とも一致しているといえます。

 

・太宰治 精神分析的見解

太宰は『思い出』という作品を書いています。

その中であるについて書かれています。

「叔母の乳房が家の出口を塞ぎ, 『もうお前の面倒を見るのが嫌になった」という声が聞こえる。」

実際に見た夢かどうかは定かではありませんが, 幼少期に育ててくれた叔母が愛着対象となっていたと見れます。

幼少期の太宰は, 叔母の乳のでない乳房を咥えながら, 叔母が語ってくれる「昔話」を聞いて育ちました。

この「昔話を聞く」という行為は, 太宰にとって母親の乳房を吸うことに近かったのではないかと考察しています。

太宰にとって, その後も「言葉」と「母性体験」は強く結びついていきます。

しかし, 太宰は様々な「母親代理者」がいたために, 適切な母性体験が築けなかったと思われる。

実母の愛情を受けてこなかった太宰は, 自分が愛される存在であると肯定することができませんでした

太宰にとって「作家になる」というのは, 母性体験への情景と願望が潜んでいるのではないかと考察しています。

太宰が芥川賞を受賞できなかったことは, 「昔話」をもらえないという体験, つまり「母乳」をくれないという体験だったのです。

それは, 太宰にとって「」を意味します。

言い換えれば,

「私は一生懸命に書きます。ですから, 芥川賞=愛情をください。どうか生きさせてください」

というメッセージなのです。

 

・終わりに

以上の考察は下記の論文の要約です。

今回の考察が太宰作品を読む際のより良い理解と, の美を強調できたら幸いです。

そして, これは太宰治という人物の全体像を意味しているのではなく, 一部であると述べておきたいと思います。

 

・引用

―太宰治 (1948) 「人間失格」筑摩書房

―田中誉樹 (2014) 「境界性人格障害の心理的理解と支援についての質的研究―作家 太宰治を事例とした解釈学的現象学の立場から―」京都ノートルダム女子大学研究紀要44号 p.37-48

―高橋三郎 (2015) 「DSM-5診断面接ポケットマニュアル」医学書院p.193

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